『陽殖園』ー日本一変(わ)っている花園ー へ行ってまいりました:後編
※今回、6000字近い長編になっております。どうぞごゆっくりお読みくださいませ<(_ _)>
訪れたのがあと少し先であれば、夏の『陽殖園』の象徴的な風景としてエゾクガイソウと共に、雑誌などでよく取り上げられる赤いタイマツソウ(モナルダ、ベルガモット)の群生コーナー。
残念ながら今回はおあずけです。
タイマツソウに限らずですが、
「この花が咲いたところ、その風景を見たい!」
そう思うからこそ、熱心なリピーターが何度も足を運ぶのでしょうね。
うーむ、巧妙な手口です笑!
あ、ちなみにツアー終了後に園内を散策していたら、群生ではありませんが別の場所に赤いタイマツソウがポツリポツリと咲くのを見つけましたよ!日当たりなどの条件があるんでしょうね。
あれから1週間超、先日の三連休に訪れた人は咲き誇るタイマツソウの群生を見られたでしょうか。
アストランティアですが、よく見かける園芸種よりも大きく、花弁に見える萼部分が広めで真ん中の小花があまり盛り上がっていないのが目につきました。私はマヨール系しか育てたことがないのですが、コレは栽培がちょっと難しいというマキシマ?フウロソウ
タマザキノコギリソウ
あちらこちらの花や景色の説明をしながら歩く高橋さんは、我々ツアー参加者に「後ろを振り返って見てごらん」
と、振り返るよう促しました。
通ってきたその時とは、また違う景色が見えるでしょう?と。
そのお話は、人間が生きていく人生のことのようにも聞こえます。
がむしゃらにやれることをやり、一心に道を歩んできた人がふと人生を振り返る時、歩いている最中には見えなかったこと、気付かなかったことが見えるのかもしれません。
園内に張り巡らせてある道は、ほとんどが高橋さんがお一人で作られたもの。
広い道に出た時に、
「ここはユンボ(パワーショベル)を使ったよ。自分で?いや、免許持ってないから1日か2日頼んだの。高いからそんなには使わなかったけど。」
自分でやっていないことはやっていないと告白する実直なお人柄。
「ここは低かったところを土を運んで埋め立てたんだよ」
一人で山土を何メートルも掘ったり、今度はそれを積み上げて小山や道を作ったり。
その気の遠くなるような作業を思うと言葉が出ません。
お話は軽快で楽しく、我々8名の参加者も夢中で聞き入ります。
赤ん坊の頃、泣き止まないオレに母親が、花(その花の名前を教えてもらったのですが失念)を握らせてみたら泣き止んでね。
寝るまで離さなくて、眠ってからも握ったままだったって。
だからね、オレは赤ん坊の時からの花好きなの。
ガクアジサイなど
緑の中の鮮やかな赤、アメリカセンノウ(リクニス・カルセドニカ)
園内には色とりどりのナデシコ(ダイアンサス)
前回記事で、蝶がとまっていた赤い花もナデシコです
子どもの頃同居していた、花が好きだったばあちゃんがナデシコっぽい花を何種類か育てていました(呼び名は「ナデシコ」だったり「セキチク(石竹)」だったり、そんな感じでザックリ呼んでいた気がするのですが、私も未だに違いがよくわかりません)。
昔の花好きの北海道人にとってナデシコ系の花は、身近で寒さにも強い、育てやすい植物だったのかもしれませんね。
コレはフクロナデシコの類い?フクロナデシコは、ナデシコがダイアンサスと呼ばれるのに対しコチラは〝シレネ〟、科は同じナデシコでも属が違う…覚えきれん
自分にとって綺麗だと思えれば名前なぞどうでも良い、
のかもしれませんが、花の名前覚えたいマニア(なんだソレ笑)の私にとって、花の膨大な名前は頭が痛くなることもありますが、つい気になってしまうんですよねぇ。。。
おっと、ちょいと脱線!
戻りましょう。
モモバギキョウの紫と白、紫のタイプはウチにもある♪
歩いているとこんな面白い花にも出会いました。
不思議なフォルム
何だか中国風のアクセサリーとか、飾りボタンのようにも見えます。
「ウリノキ(瓜の木)」
北海道から九州まで分布しているそうですが、初めて見ました。
こんな面白い咲き方をするんですね〜!
コレをモチーフに、ピアスとかストラップを作ったら可愛いいかも♪
伐採した木を利用したベンチ
わざわざ改めてベンチを設置すると野生動物にマーキングされてしまうことが多いそうなのですが、伐採した木を庭造り作業の中でさりげなーく置いておくと、動物たちが
「あれ?コレは前からあったんだったかな?」
???ʕ ·ᴥ·ʔ ʕ·ᴥ· ʔ???
と勘違いしてマーキングされずに済むんだとか。
もちろん木の伐採も高橋さんお一人で。
園内のところどころにこのように薪の材料の丸太が積み上げてありました。
3年ほどかけて木の油分を抜き、それからようやく使えるようになると言います。※油分が多く残っていると、火にくべた時に煙がすごくて使えないそう
高橋さんの『陽殖園』は、停滞せず作り続ける庭なので、新しい場所もどんどん開拓されています。
今作っている場所も見せていただきました目立つのは上段にギボウシ、下段にクロコスミア
この苗たちが大きく育った時、いったいどんな景色が広がっているのでしょうか。
きっと高橋さんの目には、常に先々の新しい花園が見えているのでしょうね。
北海道の花に指定されているハマナスの花と実
ジギタリスなど、本来は北海道の山林にはない花も、まるではじめからそこにいたかのよう
最初にいただいた園内見取り図に気になるフレーズが。
『大地を彫刻している花園』
と書いてあります。
前述したように『陽殖園』は、そこにあった土地に、ただ花を植えて出来た庭園ではありません。
自然に見える起伏も、実は高橋さんの手により演出されている部分が大きいのです。
「山の中に更に山を作る」
「土を掘り下げて池を作る」
それがより一層、この花園を豊かに見せています。
「大地を彫刻」の意味、こんな解釈で合っているかしらん。
多分、この小山が雑誌等でよく目にする、春と秋にエリカが咲き乱れる「エリカ山」のうちのひとつ(今エリカの花は見えませんね)
こちらの小山にはピンクのエリカっぽい花が咲いていました
小島池
土を運んで小島を作り、更に周りを掘り下げて作られています。
トンボ池
手前に見える細長い花穂はエゾミソハギの蕾。
咲いたら池に似合って綺麗でしょうね〜!
池に近づいた時、バサバサバサッ!とカモのような鳥が。
かろうじて後ろ姿
何度もリピートして来ているという女性が、「この池で初めて見た!」と嬉しそうです。
新しい発見は常にあるのですね。
トンボ池の名の通り、青と黒の縞模様の、体の細いトンボの姿があちこちに見えました。
エゾイトトンボかなぁ、と。
何とか写真に収めたかったのですが、細く小さく動きが早く、ほとんど止まることがないのでピンボケにつぐピンボケ。
スミマセン、鮮やかな姿は各自でググッと!お願いいたします(失笑)
このトンボ池の側に小川のような場所があり、澄んだ水にはアメンボ・トンボ・オタマジャクシ。
のどかな風景でした。
このように水場が点在しますが、一見、池に見えても高橋さんが池とは呼ばないものも。
高橋さんが意図しないもので、勝手に池のカタチになったものは「水たまり」と呼んで区別しています。
「ココは池ですか?水たまりですか?」「水たまり!」こんな会話を二度ほど
園内に咲くさまざまな花は、元々自生している野の花も園芸品種も素晴らしく調和して、どれも自然の中で生き生きとして見えます。
その中でとりわけ印象に残った花がありました。
ヒメジョオンです。
↓コレは我が家の隣の空き地のヒメジョオン
そのあたりの道端でよく見かける、いわゆる「雑草」と呼ばれる植物ですね。
可愛くて私は好きなのですが。
とされています。
勝手に外国から連れて来られたあげく雑草と呼ばれてしまう、気の毒なこの可憐な花。
高橋さんは、このヒメジョオンにとても愛情を持っていらっしゃるようでした。
花がちょいボケですね普通のヒメジョオンは色が白ですが、こちらのものは花弁に青みがかっています。
時々出てくる青みのあるものを選び取り、より青く、より大きくなるように高橋さんが品種改良されたのだそうです。
「ヒメジョオン、雑草だと思うでしょ?
でもね。
こうなるとほら。
もう、ちゃんと花でしょう?」
青いヒメジョオンが生えている場所を通るたび、ニコニコで
「美人でしょう?」
と花の顔をこちらに向けて見せてくれます。
そのたびに私も、
「美人ですねぇ!」
と。
※同行の方より、いい掛け合いねぇ!とお褒めの(?)お言葉、頂戴いたしました笑
ハイ!
これはもう、ちゃんとした花ですね。
*******
楽しくお話を伺いながら進んでいると、
「あっ!」
と向こうに視線を走らせる高橋さん。
「お客さん、もう集まって来ちゃってる!!」
ガイドツアー終盤、受付に近い場所まで戻ってみると、一般開園時間の10時めがけて一般の来園者の方々が集まっているのが見えたようです。
というか、少し過ぎてる?
あらら大変💦
『陽殖園』は庭園の維持・管理から受付・ガイドに至るまで、全てが高橋さんおひとりでこなしています。
当然、高橋さんが門を開けてくれなければお客さんは入れないワケで。
去り際、
「良かったら、すぐに帰らずにゆっくり廻って見ていってね!」
「なんだったら、その人(リピーターの方を指して)について行ってもいいよ!園内のこと、良く知ってるから!」
と馴染み客にボールを渡し、お客さんを迎えるために高橋さんは木々の向こうに消えていきました。
ありがとうございましたー!
高橋さんの後ろ姿を見送ったワタクシ。
1時間半も経った気もしないし、歩き回った疲れも感じません。
ハイ先生!
ワタシ、まだまだイケます(・`ω´・ ●)キッ!
ご指名を受けた方(笑)に、
ご迷惑でなければご一緒させていただいてもいいですか?
と聞くと気持ちよく承諾してくださったので、先に帰ったご夫婦以外の6名で、和やかに散策二次会を楽しみました。
お世話になりました!
ほど良きところで二次会も散会し、写真を撮りつつ受付の場所まで戻ったのはガイドツアー終了後の更に1時間半後。
ホタルブクロミヤコワスレセントーレア
3時間も歩きっぱなし。
でも不思議なほど疲れを感じませんでした。
受付に戻ってみると高橋さんの姿はありませんでしたが、感想を書くためのノートが置いてあったので、私もこの
『日本一変(わ)っている花園』
に感謝を込めて記入をさせていただくことに。
一体、どうやって書けば気持ちが伝わるかしらと頭を捻っていると、高橋さんが戻ってこられました。
来てみたいと思ってからもう10年ほど経って、ようやく来るのが叶いましたという話をすると、
「うん。ウチはね、みんないろんなガーデンを廻ったあと、一番最後に来るところなんだよね」
とニヤリ。
たしかに『陽殖園』さんの宣伝や広告といったものは、ほとんど見た記憶がありません。
私もガーデニング雑誌という、ある程度読む人が限られる媒体からです。
近年、北海道には『北海道ガーデン街道』という、有名ガーデンを繋ぐルートが出来たため、多くの花好きの方がガーデン巡りの旅にいらっしゃるようになりました。
大雪~富良野~十勝を結ぶ全長約250kmのガーデン街道は、『陽殖園』のある滝上町とはルートが被らないせいかこちらには組み込まれていません。
それに、たった一人でやっているので大勢のツアー客相手も難しいでしょうしね。
そういった百戦錬磨の?ガーデン巡りの方々が、何かの拍子にこの北の花園に気付く。
『陽殖園』さんの「秘密の花園」感は、この規模で運営しているからこそでもあると思うので、
ホントーに!誠に!勝手な言い分ながら、
「いつまでもこのままだといいなぁ」
と思ってしまうのです。
可愛いクラウンベッチ
お話をさせていただきながらノートに感想を書いていたせいか頭がとっ散らかってしまい、おかしな文章を書いてしまったかもなぁ…
と今更冷や汗をかいている私です。
最後に、個人ブログなんですが後ろ姿のお写真を使わせていただいてよろしいですか?とお尋ねしたところ、
「いいよ!でもオレの後ろ姿、ガニ股じゃなかった?」
と茶目っ気たっぷりに、
ウインク✨いただきました〜!!
╭(・ᄇ・)̑ﻭ̑ グッ!
本当に、お茶目で素敵で、気骨のあるおじさまでした。
北海道の観光場所としては少々行きづらい場所ではありますが花好きの皆さま、又はそうでない皆さまも、機会があれば『陽殖園』さんに行ってみてくださいね!
何か大事なものに気付くことが出来る、そんな場所だという気がしました。
*******
さて。
持って行ったクーラーボックスやカメラ、トートバッグ、スーパーで買った夕食用のお惣菜などで(もう作るのが面倒で)車の中はけっこうな荷物です。
これらを持って車から降りる時に『陽殖園』さんでいただいた見取り図がクシャクシャになっては困るなぁと、私の夏のドライブの相棒「新北海道の花」
この本の適当なところを開き、そこに見取り図を挟みこんで持ち帰りました。
荷物を片付け、見取り図を取り出そうと挟んだページを開いてみると、あら不思議!
そのページ、「ヒメジョオン」の頁でした。
占い・オカルト話全般には興味の薄い、全くロマンチストではないオバサン。
それが私なのですが、そんな私でも、
これって何だか面白い偶然だなぁ✨
と、青いヒメジョオンと高橋さんの後ろ姿を改めて思い出したのでした。