Jアラートが鳴ったけれど
朝、聞きなれないけたたましい音がスマートフォンから鳴り響きました。
我が家の朝は遅いので、まだ眠っている時でした。
寝たのが遅かったのもありぐっすり眠っていましたが、あの何とも言えない音は私を叩き起こすのに十分でした。
何だかわからないまま、音の出所であるスマートフォンを無意識に掴み、画面を見ると、
『北朝鮮からミサイルが…』
『当該地域に着弾の恐れがあります』
何だか悪い夢を見ているのかな?という現実離れした感覚。
一人起き出してリビングに降り、テレビをつけてみます。
どこの局も黒、赤、白の画面で緊迫した様子です。
『直ちに頑丈な建物か地下に…』
シェルターを持っている訳でもないし、正直家の中にいる以外、出来ることはあるんだろうかと考えてみましたが思いつきません。
とりあえず寒いなと思ったので、パーカーを羽織ります。
本当にそれくらいしか思いつきませんでした。
北海道の方に向かってるんだ、こんな警報出たことないし、もしかしてもしかするのかな
心臓のリズムがちょっと早いのがわかります。
警報を繰り返し伝える女性アナウンサーの声が少しうわずっていて、時折つっかえたりしているところが、緊張を煽ります。
もしかしたら数分後、大変なことになる覚悟をしなきゃならない
昔、戦時中に空襲警報がなった時の人の気持ちってこんなだったのかな
戦時中じゃなくても、何かで自分が死ぬかもしれない状況に陥った人も、これに近い感じなんだろうか?
もしこれが本当に大事になるのなら、人が死ぬ時なんてあっけないし、自分では何も出来ないんだなあ、とソファに体を預けながら、ただ警報を繰り返すテレビ画面を見ていました。
そのうち再び、けたたましいアラートの音が鳴り響きます。
『上空を通過しました』
どうやらこの辺りに落ちることは回避されたようです。
じゃあどこに向かっているの?
まさかアメリカ?まさかね。
それはそれで更に大変な事態になるっていうことだよね?
『破壊措置はありませんでした』
そうだと思ってました。
とりあえずの危険が去った事で徐々に体の緊張が解け、眠気が戻ってきたのでベッドに戻り、8時過ぎまで二度寝です。
(主婦、そのまま起きてろの声は聞こえない)
だって、疲れちゃったんだもん。
起きてニュースをザッピングしながら見ていると、北海道の襟裳岬上空を通過したとわかりました。
画面撮りですが、このようなルートを通ったとのこと、本当に北海道をかすめたんだなぁ、と実感します。
偶然なんですが、昨日友人と会った時に、『襟裳岬』の話になったんです。
本当に偶然。
その友人とは11月に一緒に旅行の計画を立てていて、昨日はマイレージ会員向けの、11月からの飛行機の予約が出来る日だったので、友人宅に行っていました。
PC画面には、はっきりした種類はわかりませんが『松』の写真が壁紙になっています。
下の方には「1997年 植樹」の看板も写っています。
自分で撮ったらしいその写真のことを尋ねると、20年前に彼女が『えりも町』で、植樹イベントで植えたものなのだそうです。
8月に入ってから、ご主人とのキャンプがてら、木の様子を見に行った時のものでした。
実はその時に彼女は、自分の植えた木を見つけられず、枯れてしまったと思い、せめてもの記念にと、近くの木の写真を撮ったのだそうです。
あとからネットなどの情報で、その辺りの区画や柵の場所が変更され、自分の植樹した場所の見た目が変わってしまったために見つけられなかったということがわかったそうです。
代わりに、と撮った近くの木が、まさに彼女の木だったのです。
枯れていなくて本当に良かった、と彼女は喜んでいました。
私も、良かったねぇ、と言いました。
襟裳岬の上空を通過した、と聞いた時、その会話が瞬時に蘇りました。
彼女の木の上空を飛び去っていったミサイル。
もし木に心があったとしたら、彼女の木はどう思ったのか。
今もテレビのニュースはずっとこの話題を流し続けていて、それを私は見ているし、主人は仕事部屋で仕事をしていて、猫たちは眠ったり、気ままに歩き回ったりしています。
危うい平和な日常なのだと実感した今日の朝、しばらく忘れられそうにありません。